今どきリベラルウォール街

エピソード #9

もう20年ぐらい前からでしょうか、メガバンクは世界中どれもこれもダイバーシティだの脱炭素だのリベラル政治ドクトリンそのまんまを主張するのがごく当たり前となりました。

意図的か偶然かはともかく、別の言い方をすれば民主党の政策に協調しています。ただ共和党であるトランプ第二次政権が発足するや否やその流れを逆走する動きが一気に見られるようになりました。これは今まで何年も続いたトレンドを始めて逆行する現象です。JunがMBAを習得し実際にウォール街で仕事を始めたころは基本保守、つまり共和党が牛耳っている感じでした。一体どういう移り変わりがあったのでしょうか?

金持ち白人共和党ウォール街

ウォール街といえばアメリカ金融の代名詞ですが、そこで働く人達は当然裕福層が多くなります。あのロックフェラー一族であるデービッドロックフェラーは、チェイス銀行の社長を1980年までしていましたが、共和党の為に色々と尽くして来たようです。彼に代表されるように当時のウォール街はやはり保守の共和党、そして当然裕福層でした。また女性が今ほどは社会進出もあまりしていなかった時代、白人男性の牛耳る世界、というイメージだった事でしょう。因みにチェイス銀行はのちJPモルガンと合併し、現在はジェーミーダイモン社長率いるアメリカ一のメガバンクとなりました。

ちょうど真ん中にある銀色の建物がかつてチェイス銀行本拠地だった(Jun撮影)

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対する民主党は様々な説があるようですが、1930年代ニューディール政策の頃には、労働者階級の為の党だ、というスローガンを掲げ始めたようです。少なくともロックフェラーがチェイス銀行に君臨していた頃には裕福層、それに含まれるウォール街は共和党、搾取される労働階級は民主党、という構図がおよそ出来上がっていたようです。そして民主党の政治キャンペーンに限って言えば、その構図を選挙などでは相変わらず訴えています。

しかし今やトランプ支持者こそが労働階級である事は確実。2024年の選挙では過半数の労働階級がトランプ支持、また黒人やヒスパニックなどのマイノリティー労働階級の間でもトランプ支持が増えたのです。

保守ウォール街

MBA習得後、最初の就職先は外国為替のトレーディング部門でした。先ず政治的な事は全く感じない環境でした。今時ありがちなダイバーシティ推しがおよそ無い時代でもありながら、女性の為替トレーダーも何人かいました。単純に優秀なやつ、儲けられるやつなら誰でもいい、というところで自然とそうなっていた感じでした。

ただ、今なら即刻解雇されるような人種や性別差別ジョークは連日みんなで言い合っていると言う、今では全く考えられない環境でした。勿論日本人を小馬鹿にしたジョークも沢山聞かされました。それは日本人であるJunにあてつけて嫌味とかではなく、みな揃って自身の人種や風貌までも自虐ネタとして言い合う環境。なので安心して笑っていました。

その連日聞かされるジョークの中で気付いた事ですが、政治系のネタは当時政権を握っていたクリントン、特にアンチヒラリーが実に多かったのです。民主党支持者が多ければそのような事はなかったのでは、と考えられます。

あの時代ネットサービス等が無く、会社同士でのコミュニケーションはファックスを多く使用していましたが、そのヒラリーネタのファックスが色んな所から何度も送られて来たのはよく覚えています。今時社内メールで冗談を送るとかは基本禁止でしょうが、あの頃はファックスですらもとんでもないジョークを送りあっていました。

因みにネットサービスやメールが会社に導入され、その社内メールでファックスに代わりジョークを交換し合うが当然ありました。とんでもない人種差別ジョークをやり取りした連中、それがばれて解雇されるという事に。。。そのニュース等をきっかけに、メールにはヤバい事は絶対に書かないと言う習慣も既に出来ました。

何はともあれ誰がどれだけ儲けたか、あるいは損を出したかが連日はっきりしているトレーディング部門、政治その他を論議よりもただ単純にリスク及び資本に見合った利益を出すのにどれだけ貢献したかという点を基準にみな進んでいました。そういえば唯一政治ネタを追っていたのはエコノミストチームぐらいでした。今ではありがちなダイバーシティ目線で「成績一位の人はいつも白人男でそれは問題だ」という阿保な事を言い出す人は皆無、今から思えば単純かつ分かり易くしかもやり易い環境でした。

教会でリクルート

何度も転職をしてきたJunですが、とある銀行に就職したきっかけはビジネススクールのクラスメートを通してでした。その旦那さんがある銀行のエグゼクティブクラスで、彼らの別荘に泊まりに行ったりうちに来てもらったり等と交友がありました。でとある一大プロジェクトを始めるのでその一員にどうか、と話を持ち掛けられ転職となりました。所属はそのプロジェクトの為に作られた部署でした。

左の建物がその銀行本拠地、まさにウォールストリートにある会社でした(Jun撮影)

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仕事が始まり直ぐ知った事が、直の上司が実に敬虔なクリスチャンであると言う事でした。伝統のある日本には随分と敬意を示しているようなところがあり、そういった意味では別に悪い事はない感じ。また彼は晩婚で、奥さんは海外での布教活動、ミッションで一緒だった人とゴールインだったとのこと。そして週末はおよそ教会に行くという習慣があったと。会社で仕事はしているものの、基本クリスチャンとして神に捧げる、というようなノリの人でした。間近にそのような方は今までにいた事が無く、ある意味大変新鮮でした。

同じ部署ではありませんでしたが、仕事でよく一緒になったとあるデリバティブリスク専門の方がいました。なんとその彼がその会社に就職したきっかけは、教会でJunのボスとは知り合いでそのつてでもって入社したとのこと。教会でリクルート、というのはそれまで聞いた事が無く、実に驚きました。というかそういう宗教絡みの就職ルートっていうのマジでありなんですか?と思いました。

今も昔もアメリカでは敬虔なクリスチャンはつまり超保守派、そして殆ど全員が保守共和党支持者であります。彼らからしたら特に今時はアンチクリスチャン化したと言われる民主党は無理な様子。しかし話はここで終わるどころではありませんでした。

いたるところにコンサバ

会議が予定より早く終わると、雑談が始まるものですが、何かしら政治的な事を話す傾向が強いと気付きました。ある時はニューヨーク州隣のニュージャージー州の州知事がどうのこうので盛り上がっていました。またJunの所属する部署の部長はニューハンプシャー州出身で、そこの共和党員かなんかで実はそういった政治活動もプライベートにはしているとの事でした。

とある同僚が突然病気になり入院した時の事でした。闘病する彼にビデオメッセージを送る事になり、皆さん一人ずつ色々なメッセージを録画し、誰かが編集して纏め上げました。その纏まった皆さんのメッセージが詰め込まれた動画を見たら面白いものが。

あるエグゼクティブ親父曰く「我々には軍人上がりの立派なコンサバの貴方が必要だ。早く職場に復帰する事を祈っています」というメッセージでした。因みにウォール街は今も昔も元軍人を好む傾向があります。勿論大学さえ出ていないという軍人上がりでは流石にちょっと無理でしょうが、大卒以上で元軍人はやけに好まれる傾向があります。そして軍人はおよそコンサバ、共和党支持者です。そのビデオメッセージですがそれを言った人、闘病中の彼、共に完璧にコンサバというのが明らかでした。

Junはひょっとして部外者?

気付いてみたら、直の上司は超敬謙なクリスチャン、同僚にはクリスチャン以外に元軍人の硬派保守、そして部長さんは共和党員のコンサバ、兎に角クリスチャン共和党支持者だらけではないですか。そして皆さんそれを隠す様子もない。それに気付いた後、普段の何気ない会話、会議後にありがちな政治絡みの雑談、全てにおいてそのコンサバクリスチャンの集会ではないか、と思うようになりました。

いきなりJunに対して直接「クリスチャンでもない日本人のお前は部外者だ」などという人は当然いません。皆さん基本ナイスにJunには接してくれています。しかしそのナイスな微笑みに隠された本心では、Junは部外者扱いなのでは?と言う、一種の疑心暗鬼かもしれませんが、その気持ちが日に日に大きくなっていきました。

因みにJunを紹介してくれたエグゼクティブの方ですが、彼はそういった宗教、政治絡みの話を基本しない人でした。彼の信条はともかく、多分それでクリスチャンでもない日本人のJunを紹介する事には躊躇しなかったのでは、とも考えました。

そんな時にふと思い出したのがJunより三歳年上の実の兄の言葉です。大学に入る前に言われたのですが、大学の恐ろしいところは、嫌われていても本人が全く気付かない事があると。何故なら小学生なら直ぐぶん殴るなど明らかな虐めの対象になるところ、大学生は流石に皆いい大人、そういった露骨な暴力沙汰は滅多となく、ただ嫌われ物はさらりと避けられたりすると。

そして兄の忠告通りJunの通った大学、クラスの嫌われ物は裏でぼろくそに言われていましたが、表ではみなおよそ普通に接していました。

まさかこの職場はまさにそういう状況なのか???そんなことを聞いたところで誰も教えてくれるわけがありません。

最終的にはその政治的な雰囲気よりも、単純にあまりにドケチな体制に嫌気がさして転職を決意しました。

ある時事務局に呼び出され何かと思ったら「おいJun、何月何日にあなたは会社の電話で一時間以上電話していたけど何なのだこれは?」と聞かれた事がありました。言われて直ぐ思い出したのが、クレジットカード会社に確かにそれぐらい電話していた事があったのでそれを説明。余計な金がかかるから控えるようにと注意されました。後にも先にも会社の電話に関して注意を受けたのはその会社だけでした。このようにドケチ過ぎてかえって仕事にならない、と言う事がいくつもありました。幸い仕事探しを始めて3か月後には新しい職場につきました。

インターナショナルな新しい職場

転職先ですが入社して直ぐ、もの凄いインターナショナルなメガバンク、と感じました。そもそもNYCにある会社はどこでもそうなのか、と思われがちですが全然そうとは限りません。

つい先日までいた会社が正に政治および宗教的に偏った環境、という感じでした。いい加減NYCの生活に慣れていたとは言え、新たに入社した環境は正に世界中から様々な人達が集まっていて新鮮にさえ思えました。また海外のオフィスともよく一緒に仕事をする機会がありました。今から思えばあれはあれで自然と出来上がっていたダイバーシティあふれる環境。

保守クリスチャンだらけの環境と比べたら、正に真のリベラルとも言えましたね。因みにこの時点でもまだ会社が無理やりダイバーシティ推しをしている状態では全くありませんでした。

その後サブプライム危機や更なる転職など色々とありながら月日が経ちました。

かつての超保守ウォール街、何故か、入社した随分とコンサバクリスチャンな環境、そういった事をすっかり忘れて当たり前に仕事はしていました。しかし突然とまた何か起こることはあるものなのです。

Junの余計な一言(ありがち)

時は既にオバマ第二政権。あとで気付いた事ですが、ダイバーシティ推しなどはその頃に随分と加速した様子でした。当時アメリカの政治など全く興味もなく、それはそれで何の支障もなく仕事と普段の生活をしていました。

とあるミーティングでの事でした。Junを含め三人の男と一人の若い女性が参加していました。そのミーティングの音頭をとっていたJunが「今現在この会議には三人の醜い野郎どもと一人の美人が参加している」と言う様な事を冒頭に言いました。くだらないことですがちょっとしたうけを狙ったしょうもない発言でした。でそんなことはさらりと抜けて会議、そしてなんということなく会議終了でした。で席を立ち上がって自分のデスクに戻ろうとした時に、その「三人の醜い野郎」の一人がJunを引き留め話を始めました。因みにその彼は結構な役職のエグゼクティブでかつ彼にはもの凄く気に入られており、いつも冗談を言い合ったりまた様々な仕事を一緒にこなしてきた仲でした。

そんな気の知れたしかし一応会社のエグゼクティブな彼、何を言い出すかと思ったら全く予想だにしない注意をされました。「さっき会議の冒頭で【三人の醜い野郎どもと一人の美人が】って言ってたけど特に【美人が】という表現、あれマズイから気を付ける様に」と注意されたのです。

彼とは修羅場も一緒に経験するなど強い信頼関係を気付いてきた人でした。当然Junの普段の冗談交じりが多いスタイルなどもすべて知っている人。しかしその彼があのような注意をそれこそいきなりしてきた、という感じだったのです。これには彼に対して不信感を抱く、という事では全くなく、何か知らないところでおかしな事が起きている、というように感じました。

そして理解した裏事情がこれでした。女性に対して「彼女は美人だ」というのは差別発言に当たると。誉め言葉がどうしてか?と思うのがごく当たり前の感覚でしょう。またこのJunもそう思います。しかしすべての女性社員がその「彼女は美人だ」という言われ方をされるわけではないのが現実です。ということはそういった言葉をかけられない女性には「あいつはブスだ」と静かに発言しているに等しい、という言い分が知らない間に通説となっていたと言う事だったのです。

こういう人たちにも平等に「美人ですね」と声をかけないと差別者扱いされかねない(イメージはAIで作成)

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親がファッション業界の企業経営をしていたJunとしては、女性の着こなしに対するいい評価を言葉にして褒めるのは当たり前の事として育ってきました。

しかしファッション一大都市である筈のニューヨークでその誉め言葉を言えば、サイレント差別に当たるという状況に知らない間になっていたのです。

人事部の台頭

日本でバイト以外は仕事をした事が無いので全くの勘違い、時代遅れ感の可能性大ですが、確か日本の大企業などの巨大組織では人事部の権力が随分高いと伺ってます。その真逆がアメリカ人事部です。基本事務係という感じで、悪く言えばろくでもないかつあてにならないような人がうようよいる部署、というのが正直な印象。実際Junがビジネススクール卒業後就職した時点では会社の人事部は正にそんな感じでした。

しかしこの30年ぐらいの間にただの事務所だった人事が依然と比べれば随分と権力を持つ機関となったのは間違いありません。

いきなりそうなったのではなく、徐々に様々な事例を経てそうなったという感じです。

その一つの要因がセクハラ問題と推測しています。かつては当たり前に中学生レベルの下ネタを職場でも平気で話していたのが、セクハラ訴訟などで多額の賠償金と判決など会社としてはとんでもないリスクとなりました。そこで人事が中心となり従業員へのトレーニングなどをするようになりました。そしてその延長と思えば分かり易いのですが、性別、人種差別もいけない、あれもこれもいけない、と現実に法的に問題になる事柄が気付いてみれば山積み。

「彼女は美人だ」発言は、それを言われない人に対する「貴様はブスだ」発言とみなされるも同様と、事実上なってしまったと。そしてそれらへの対策という形で人事が社員に対する強制的なトレーニングなどを行うようになりました。

かつて働いたとあるメガバンクでの事ですが、そういったアンチ差別トレーニングを受けた際には、「お気持ち」対策までありました。知らない間に人の気分を害する事があるから気を付けるように、というもの。これまた実にバカバカしいものです。仕事をする上で厄介な上司に当たってしまった場合は、毎日がこちらのお気持ちを害されるのが現実。人事によるその他人様のお気持ちトレーニングは滑稽でしかない。

これらが直接のきっかけで、とまではいかなくとも流れとしては、ビジネス上での金儲けを第一に優先順序及び社内での権力ランクが決まってきた、社内闘争バランスに影響を与える事となったとは言えるでしょう。「おれはジェンダー平等を目指したいからトレーダーになった」という寝ぼけた人はそもそもトレーダーにはなれません。要するに今時の人事部が主体になって推している会社のアジェンダは、正直な金儲け以外の事が満載となりました。そして金融たるそもそもお金の商品を扱う業界が、それ以外を広く訴え、また社員にはダイバーシティー尊重した人事採用政策を強要したりと、利益優先の自由競争原理はどこへやら・・・と言える状況までなり始めました。

CDO

この流れの極めつけがCDOです。ウォール街でCDOといえばCollateralized Debt Obligation、債務担保証券ですが、今やそれ以外にChief Diversity Officer、最高ダイバーシティ責任者という意味があります。これはビッグテックから流行りだしたものですが、ウォール街でも採用されるようになりました。驚く事に、このようなしょうもない(とJunは思う)職に何億円相当の給料が出るのです。やっている事はいかに会社のダイバーシティを増やすか、みたいな事です(呆)。

人を雇う際にどうやって黒人割合を増やすか、逆に白人を抑えるか、ダイバーシティ月間にはどんなゲストを招待するか、そんな事ばかりやっている連中です。

言い方を変えれば、このCDOの役員達がどのように会社の利益向上に役立っているかは疑問です。それこそ株主はCDOに何億も使っているのは受託者責任の違反として裁判沙汰にできるネタであり、実際アメリカでは裁判沙汰になっている事なんです。

レインボー、リベラルウォール街

例えばトレーディング部門のヘッドが毎年いかに儲けるか、戦略を立てて実行するか、その為にどのようなリアルタイム決算を構築するか、等と常に考えるわけです。その時に「今年は女性の割合を4割以上にする」等とはおよそ考えません。何故ならこの例で言えば、女性が増えれば単純に儲かるという確実な証拠がないからです。極端な話、その部長さんに女性の割合を増やすか、儲けを増やすか、どちらかのゴール一つにするとしたらどうしますか?と聞けば、答えは分かりきっています。

ビジネス部門では究極的には結局儲かるのかどうか、という明確な判断基準で全てを決断すればいいわけです。しかしそれでは勝てないので、それ以外の方法で権力を手にする方法、相手に物を言わせない、何かがあればこんな都合のいいことはありません。

偶然の一致かどうかははっきりしかねる点がありますが、この人事の動向は、民主党が特にオバマ時代から始めた政策と基本同調しています。民主党はダイバーシティ推しを政策としてはっきりと掲げていますし、偶然の一致としても近年の人事によるダイバーシティ推しと重なります。まさかの始めから口合わせをしていなかったとしても両者が近づいたのは全く不思議なことではありません。

民主党公式ホームページより、様々なダイバーシティ推しがわかります

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そんなわけでかつてはコンサバ共和党だらけだったウォール街、全てが人事のせいとは言えないでしょうが、知らない間にリベラルかつ政治的に民主党の主張とすっかり重なるようにまでなって来たのです。そしてメガバンクを筆頭にウォール街の会社は様々なダイバーシティイベントを社内で開催するまでに至りました。

先ず、2月は一か月黒人の月です。3月は女性の月、など年中目白押しです。その中で最も大きなイベントが6月の一か月に渡るLGBT月です。毎年6月はマジで連日、人事からメールが届き今日はこのゲストスピーカー、明日は某性転換した人の対談、連日ではなくとも週一回は必ず社内全員に向けたイベントが開催されます。そういうネタに興味のない社員(Jun含む)にしてはあまりの陳列ぶりに正直うんざりするぐらいでした。

およそどこの会社でもありがちなダイバーシティ系の年中行事(リストJun作成)

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JPモルガンの年次報告書より(https://www.jpmorganchase.com/content/dam/jpmc/jpmorgan-chase-and-co/investor-relations/documents/annualreport-2021.pdf)

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必然的にダイバーシティー関連にしろ、基本リベラル思想を掲げる事に関しては会社では堂々と主張ができても、対する保守的な事に関しては殆どタブー化されました。

黒人の月があるのに白人の月は無い。女性の月があっても男性の月は無い。しかしLGBTの月はある。かつては基本保守だった金融業界、知らない間にクリスチャンが口を閉じ逆に一年を通して何度もLGBTイベントを会社が主催するまでになったのです。

2016年の大統領選では、ウォール街がどちらの政党を支持したかと調べれば決定的な違いが直ぐ分かります。民主党大統領候補となったヒラリーは、莫大な資金をヘッジファンドを始めウォール街からもらい受け、対する共和党候補のトランプ遥かに少ない援助を受けていたのです。

また元大統領であるオバマやクリントンはウォール街相手にスピーチをする事がありますが、その度に巨額のスピーチ代を貰い受けています。かつての労働階級のリーダーとしてはあまりに矛盾した滑稽な姿です。

因みにこういった変化は、逆にそれまでの民主党の基盤であった労働者階級離れを招きました。

そして2024年大統領選でのトランプ勝利は、そういった変化が確固たるものである事が確定したのです。

リベラルキャリアSNS

終身雇用が比較的続く日本では、転職の為にあるSNSは利用者がアメリカ等と比べると遥かに少ないようです。その転職用のSNSの王者がLinkedIn.comです。フェイスブックと似ていますが出身校と職歴を書かねばならず、貼り付けられる記事は仕事の募集、ビジネスニュース、そういったところです。ホワイトカラーの仕事をしている人でこのLinkedInを使用していない人はおよそ皆無、少なくともウォール街ではそうと言えるでしょう。

リクルーターがこのサイトを利用してサーチ、そこでめぼしい人を見つけてメールなりでコンタクトしてヘッドハンティング、という流れがありがちです。またSNSならではの、誰かとコネクトして情報交換、また自分を売り込む等、様々な職活利用ができるようになっています。

そのサイトの創始者はリードホフマンと言うビリオネアですが、彼は超アンチトランプのハードコアリベラル民主党支持者です。膨大な資金を民主党に寄付しており、特にアンチトランプに力を入れているのが明らかな人です。

その彼の政治思想がLinkedInに意図的に反映されている、とまでは言い難いにしても、このサイトは基本リベラルネタが殆どで、稀に保守やトランプ支持の掲示も見かけますがそれはかなり少数です。就活にはおよそ関係ない事柄も多く、創始者の意向で政治洗脳もされているのかとも考えてしまいます。

このようなアンチトランプメッセージが就活サイトであるLinkedInよりよく流れてくる

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こういった就活サイトが明らかなリベラル民主党寄りであり、利用者の間でもリベラル意見は自由気儘に言いたい放題、逆に保守系は口を堅くしている、という印象です。アンチトランプの投稿はよく見かけますが、アンチ民主党系のはおよそ見かけた記憶がありません。

そしてこのLinnkedInで見られる風潮はそのまま会社の雰囲気まで変えてきました。かつてはクリスチャン保守派が堂々とその線の話をしていたのに今やその正反対、皆さん堂々とカマラやオバマ賞賛、アンチトランプ節ばかりです。トランプ支持者及び保守派やクリスチャンは発言権を職場では失ったかのようでした。

トランプ第一政権

圧倒的に民主党を支持したウォール街、いざトランプ政権が始まるとあっという間に最も元ゴールドマンであふれる政権となってしまいました。しかしメガバンクを始め基本業界としては相変わらずダイバーシティー推しという状況はほぼ変わっていませんでした。言い方を変えれば一部ではトランプにすり寄るウォール街の影響があったとは言え、相変わらずのダイバーシティー崇拝の民主党政策そのものを続ける会社が殆どでした。そしてそれは株価最高値を更新し続ける状況に置いてでもです。美味しいところはしっかり頂戴するも、だからと言ってトランプ率いる保守共和党へ寝返りうつというのは皆無と言えたでしょう。

忘れられないのがあのジョージフロイドです。ウォール街のみならず相当数の会社が直接ではなくとも、イデオロギー上では明らかなBLM支持を表明しました。ウォール街で最も有名であろうことがシティーグループのCFOが黒人ですが、彼はBLM活動家と思われるような発言をしていました。

いまだにシティーグループ公式サイトに掲載されているジョージフロイドネタの記事 https://www.citigroup.com/global/news/perspective/2020/i-cant-breathe 

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あの頃は会社にしろ、若い学生の集まる学校という団体にしろ、BLMスピーチで溢れていました。警官がジョージフロイドを押さえつけているビデオ、最初は衝撃的でしたが毎日のように会社や大手メディアで宣伝されると正直うんざりします。リベラルな学校でそれはまだしも、会社という金儲けの団体が、何故かソーシャルジャスティスに一生懸命になっている姿は、特に金融業界では滑稽でしかありません。

トランプ第二政権

しかし2024年11月の大統領選挙でトランプ第二政権誕生を決定した後大きくこのリベラルウォール街という状況があっという間に変わり始めました。

前述のシティーグループ、そしてゴールドマンサックス、JPモルガン、モルガンスタンレー、バンクオブアメリカ、ブラックロック、ウェールスファーゴ、といった一連のメガバンクがダイバーシティ推しを一気に止める、あるいは縮小すると正式に発表となりました。この政策上の180度方向転換の素早さといえばあり得ないものです。

そしてリベラル民主党ダイバーシティ推しと同様に、肝心なポリシーが脱炭素などのグリーン政策です。これまた散々ウォール街でも推されていたのに、トランプ第二政権が発足するや否やあっという間にそれらのゴールを撤退する銀行が続出。地球の為に勇敢に立ち上がった筈なのに?勇気がなくなったの?と言いたくなります。

ダイバーシティネタとグリーン政策は、共にトランプ第一政権発足時に既にありましたが、およそどの企業もその姿勢を変える様子は伺えませんでした。しかし第二政権が発足するや否やこの迅速な反応、手のひら返しぶりは異常です。

この違いの大きな理由が、トランプ第二政権では比較にならない程のスピードと量を実行している点にあります。またそれにあたり何を言われようが全く気にしない、反対意見にはとことん闘うトランプの姿勢が見られます。この点が8年前とは大きく異なる点です。

そしてその実行力と相当シリアスな方向性の大きな違いが企業には明かだったのでしょう。これはこの政権を怒らせてはろくな事がない。つまり儲けに悪影響する、と誰しも考えた筈です。

ダイバーシティ優先の誤った方針を禁止する大統領令 https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/01/fact-sheet-president-donald-j-trump-protects-civil-rights-and-merit-based-opportunity-by-ending-illegal-dei/

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やはり金儲け

振り返ると保守ウォール街がリベラルへと変遷したのは、ゆっくりと10年以上の歳月を経てでした(という個人的に受けた印象)。しかしトランプ第二政権誕生に伴い、あっという間に方向転換したスピードは特筆に値するでしょう。以前のように保守派が基本、という感じは流石にしませんが、10年以上に渡り社内ダイバーシティーキャンペーンを聞かされ続けた身としては、この方向転換は本当に異例に感じられます。

しかし株にしろ毎日トレードされる市場を眺めていればこういった急な方向転換はある意味納得できます。まずいと思ったら一気に皆さん売りに出し、株は暴落いとも簡単にしてしまいます。

巨額のお金がかかっているとなれば皆さん実に行動のスピードが速いものです。

行動力がずば抜けている今回の政権、それに明らかに嫌がられているダイバーシティとグリーン政策、一刻も早く撤退を表明しないと何されるか分からない(儲けに影響する)。

今まで何年もLGBTの月、黒人の月、と散々やってきましたが、金儲けに影響するとなれば、今までの格好いいセリフはさっさと忘れてもらって「はいトランプ様、これでどうかしら?」と言わんばかりの急速な転換です。

前述しましたが、ダイバーシティ推しは人事による要素が大きかったと個人的には考えていました。そしてグリーン政策に関してはカーボントレーディング、カーボン税、グリーン債権など金融商品としてのまた儲ける手口となるネタが多く、ウォール街は積極的に推したところがあります。そしてこれらの巨大スポンサーの一つが民主党でもあります。

2024年大統領選挙で民主党が大敗、トランプが圧勝という形でその民主党が思いきり勧めてきた政策を、金儲けが主体の民間企業が公にやるわけにはいきません。そう考えればこのいとも簡単に行われた方向転換は説明がつきます。またもし今後民主党圧勝なる事があれば「やはり本社はダイバーシティ」とこれまた真っ先に言いだしても全然不思議ではありません。

やはり基本ウォール街は保守?

この業界が次何を言い出すかは想像できませんが、全く変わらない事があれば、当然儲かる為には何でもするという本質です。自由競争資本主義ではそれが基本原理であり弊害もありますが、それが一番です。共産的社会では選ばれた少数企業だけがぼろ儲けで、残った多くは儲けの少ないか皆無の奴隷下請け。ヒラリー陣営に大量の資金提供をしたとは言え、今となってはウォール街が一気にトランプ政権へひれ伏しましたが、これは労働階級が今や支持する保守トランプ政権へ従うこととなった流れと言えましょう。

こういった流れからすると、アメリカはやはり自由経済が主体であり続け、それは今時の民主党が進めるリベラルの名の下に行われる共産主義ではなく、結局保守自由経済なのか、とトランプ第二政権誕生と共に深々と感慨深く啓示されたかのような状況であります。

Jun