新卒ウォール街就職 、その1

エピソード #15

今時のアメリカで大学新卒生はどのようにしてウォール街へ就職しているのでしょう?

やはり狭き門ですし、そうなると運も大きく作用します。「新卒ウォール街就職 、その1」ではJunがメガバンクで関わったリクルートイベントについて、「その2」ではJunの娘達二人がいかにしてウォール街就職を果たしたかを綴っていこうと思います。

インターンというステップ

アメリカでの大卒就活ですが、在学中に何らかの形で就職希望先の業界に関連した仕事をしていないとほぼ就職は無理です。これはウォール街のみならずどの業界への就職活動にも言える事です。経験なしでも全然取れる仕事はわざわざ大学を出る必要がないレベルの低賃金職という事になります。

アメリカでは「インターン」と言って夏休み期間中に大学生を雇い、何らかの仕事をさせて基本使えるかどうかのテストをするわけです。学生にとっては貴重な仕事経験を積む事になりあわよくばそのまま就職。企業側は安い賃金で学生をテスト期間として使えるわけです。

会社側はたったの2か月かせいぜい3か月の間に、経験皆無レベルの大学生にでもできそうな小さいプロジェクトを与えます。これに企業の明日を賭ける、というような事は当然無く、しかし上手くいけば何らかの面白い結果を出してくれる。悪くても別に損はない、というやり方が基本です。会社側として肝心なのはその人が使えるかどうかのテストをする点です。

ここでブラック企業は、ただ低賃金で大学生をこき使うも実はあります。しかし学生にしてみれば実際はこき使われのどうしようもない企業だったとしても、履歴書にはもの凄くカッコよく何をしたか書く事ができ、卒業前に別の会社に上手いこと言って就職は十分可能です。

いずれにしても在学中に何らかの職歴を積むは絶対条件と言えるでしょう。日本でもこのようなインターンを経ての就職が増えつつあると伺いますが、アメリカのようにそれがないとほぼ不可能という状況とはかなり違うと言えるでしょう。

雇う側視線

大学新卒を対象にしたリクルートイベントに初めて参加したのはもう十数年前だったか。夏のインターン募集をするにあたり、面接官として手助けをしました。同様の事をいくつかのメガバンクを渡り歩いてはやってきましたが、大体どこも大まかには同じような段取りでした。

先ずは会社が大学へインターン募集を告げます。と言うよりおよそ毎年同じ時期にこういった恒例事業が始まります。勿論景気が悪くなり「今年はすいませんが...」という事も十分あるでしょう。会社側は募集先の大学が大体決まっていて、当然人気のある会社ではやはり所謂エリート校に集中します。会社と同じ地域にある大学でも全く無視は普通にあります。

そんな訳で日本同様、若い人達は皆エリート校に入りたがる。この状況は未だにウォール街就職ではありがちな事です。

マンハッタンに本社のある某メガバンク、Junの所属していた部署では、NY市内にあるトップ4つの大学ともう一つ近場の某有名大学と、合計たったの5つの大学だけを対象にインターン募集していました。ボストンにいくつもあるエリート大学は何故か番外でした。こういった対象の大学選びは人事が大きく関与しており、どう言う選択の仕方なのかは理解に苦しみました。とはいえ基本随分優秀な学生が募集してきてきた事は間違いありません。

JPモルガンホームページでの学生募集。誰でも応募できますが実際は新卒採用では大学レベルで足切りまずはやっているような

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人選ですが、まず最初のステップはレジメブックに目を通す事です。人事がかき集めた学生のレジメ(履歴書)、合計いつも100人は超える程の数を全て目を通してめぼしそうな人をチェックします。最初の数人は今まで何をやってきたか、大学の専攻、などなど結構細かく読みがちなのですが、5人程それをやった後まだ100人近くも残っているという事を考え、その先は思いきり手抜きで目を通すのみとなりがちでした。

レジメブック掲載の順番はそれこそアルファベット順などで最初のAさんとBさんだけ精読して残りは適当、これは大変不公平です。自分もかつては試行錯誤してやっと就職した事を思い浮かべ、気を持ち直して真面目にレジメ評価を続けました。一枚のレジメを1分ではまともに評価出来ません。もし一枚につき2分使っていたら200分、ほぼ3時間半です。ただ何かを計算してどこかに入力あるいはメールを出すとは違う精神的に疲れる大変な作業なのです。

ChatGPTが出てくる前の話ですが、Amazonがその当時のAIを使って最初のレジメ選考任せたところ、野郎ばかりになってしまったとのこと。ダイバーシティを強く推す会社としてはこれはまずいとなり、あの時点では取り敢えず人間様が選考を続けるという事になったそうです。あのようなハイテク会社に適した人は当然オタッキーな野郎ばかりになるのは当然というように言われてた気がします。

何はともあれ、そういった書類選考をするのはJun以外にも何人もいました。人事はそういった選考員の意見をかき集め、評価の高かった学生を後日会社に招待します。ただここで一つ気になる事と言えば、人種と性別の割合をまさか決めているのか、という疑問でした。特にメガバンクではそれを間違いなくやっていたとしか思えません。インターンどころか正社員を雇うにあたってもそういう事柄が関連していたので、インターン最終選考のチケットを与えるに際にもそういう事はあった可能性は大です。

人事により半数以上が既に書類選考落ち、それを通った学生達数十人をかき集めて半日缶詰になりました。

あらかじめ人事が決めた誰が誰を何時何分からインタビューするかを決めて、当日はそのプランに沿ってベルトコンベア式にさっさとこなしました。確か一人当たりたったの10分ぐらいとかですが、割り当てられた学生のレジメはあらかじめ一応目を通しておく事になっていました。そのレジメを見る限りやはり書類選考を通っただけの事はある人達でした。しかしレジメは立派でも実物は大きく違う事も多々ありです。

ここで何人か良きも悪きも印象に残った面接を記します。

インターン面接あれこれ

金持ち中国人

レジメから既にアイビーリーグでまあ頭はいいのだろうという仮定で面接に臨みました。出てきた人は女性でシャネルとかそのあたりのブランド物ですべてを飾り付けていました。今でもその服装覚えていますが、学生で既にこの格好で学費が年間一千万円クラス、相当裕福だろうな、というのが第一印象となりましたが、名前から想像できる通りの中国出身で、中国訛りの英語を話す人でした。

しかし肝心なのは当たり前ですがそれではなく、メガバンクたるところで仕事ができる人材となりうるかどうかという点です。第一印象が悪影響を及ぼした可能性は否めませんが、何かしら会話が中身のない軽いところでしかできていない印象をもの凄く受けました。二十歳ちょっとでこれはまずい、というのが結論でした。

アイビーリーグでいかにも金有り余り系の雰囲気の彼女が着ていたシャネルはまさにこんな感じだった(eBayより拝借イメージ)

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同じ日に面接した別の人、その人も中国系でしたが生まれ育ちはたしかNYC、しかしマンハッタンとかではなくちょっと離れた労働階級というような地域でした。大学も公立でアメリカの大学事情で言えば最も学費が安いところの一つ(と言っても年間100万円は超える)でした。見た目もまあ普通というかシャネルなどのブランド物とは全く縁のないところで纏まっていました。

話を始めるとなんとなくネクラな印象を受けました。しかしそれよりもそのちょっとオタクっぽい雰囲気の中、下から上へ苦労しながら這い上がって来た努力家的な雰囲気を、話す程にじわじわ感じないではいられませんでした。多少ネクラかもしれないが、こういったハングリー精神が明らか、かつNYC出身とはいえあまり裕福ではなさそうな子供時代をどうも送ってきて、今やメガバンクたるところへインターンのチャンスを先ずは握った。何かしら応援したくなってしまいました。勿論彼女は推薦した内の一人でした。

ホラー趣味

そういえばアジアの国々出身あるいはアジア系アメリカ人、ともにそれ以外の人種と比べると基本実におとなしいのが平均的な感じです。アメリカ生まれ育ちは多少ノリがいいのがいますが、しかし平均的には大人しい。そしてこれまた平均的に学問はよくできるのが多い。

次に面接したこの彼女もまたそういう大人しいオタク優秀系でした。この彼女の場合強烈に印象に残ったのが一つありました。

履歴書の最後の方に、人によっては趣味などを書いている人がいます。これは全く必要がない事ですが、場合によっては会話のネタになるのでそれを狙って書いておく事もあります。

因みにかつてJunもそれはもれなく書いていました。そして実際面接でJunの趣味について話題になり盛り上がった事が二度も。ただしその両方とも仕事のオファーはありませんでした。つまりそれでたとえ盛り上がっても何の価値もないと言う事です。そういう経験もあり、随分前からレジメに趣味について書く事は一切やめました。トランプがゴールドマンサックスの社長に対して、彼のDJ趣味を取り上げて貶している事が先日ありましたが、ちょっと変わった趣味は目を引く反面、肝心なところで何かあると「あんなしょうもない趣味やってるからだ」と謗られてしまいかねません。

でそのインターン面接でこの彼女は趣味に映画、テレビ鑑賞とかいう事を書いていました。因みにジョギング、読書、映画、といったあまりにありきたりな事を趣味としてわざわざレジメに書く必要は全くないと思います。やはりそのようなありきたり趣味は初対面の人との話題としては実に面白くない。

しかしどういういきさつかは忘れましたが、彼女の趣味のテレビの話題になりました。そしてここで爆弾発言、というかこれ面接で言うの?という事を発言。なんと好きなテレビ番組が連続殺人事件を扱ったシリーズでした。そのような事をにこにこしながら面接で話題にするというちょっと普通ではない感覚にすっかりこちらがドン引きしてしまいました。因みにその番組は金田一耕助(古い?)ノリなどの推理ネタでなく、ひたすら血の流れるバイオレントな、そういう趣味の人が見るものでした。なのであれが好きだと言われるとちょっと引いてしまいます。ましてやメガバンクの面接ですよ??

彼女を面接した同僚達は同様に「あれはちょっと変な奴や」と言っていました。しかしです。どういうことか、勝手な予想では人事が何かしらの理由でその連続殺人ドラマファンの彼女を雇う事にしてしまったのです。

インタビューでなんらかの問題、あるいはその可能性が分かり、こいつはやめておいた方がいい、と報告しても雇われてしまう、と言う事は多々あります。そしてこれは知る限りどのメガバンクでも起こる事なのです。

そう考えると馬鹿馬鹿しくもなるし、いかに運の良し悪しで決まるか、と言う事でもあります。ネットで見かける「元どこか外資」というタイトルで頑張っている人達の中には、あまりにも稚拙な事しか言えない人が残念ながら見かけられます。そう、つまりこういう人達でも入ってしまう事が現実に十分あるわけです。

パーティー男

別の面接で登場したこの若造、まず服装がいかにも大学生の青い男、という雰囲気丸出しでした。ただ実に好感を持てるにこにこした顔をしており服装はちょっと、でしたが取り敢えずトータルではいい印象でした。

でいつものようにありきたりの大学での活動、専攻に関する知識のレベル、どうしてメガバンクに働きたいか、色々と質問。この辺りは誰にでも聞く事柄です。しかしとても気になったのが、話せば話すほどに滲み出るあまりに子供っぽい幼稚ともいえる性格でした。よく言えば人が良くて何が起きても笑って流し常にイベントを探し求めるタイプ。

今までの人生で誇りに思える活動は何か、という質問に対して、一大パーティーを企画したことという答えには呆れて笑えるのを堪えるのに大変でした。まあまだ若いとはいえちょっと無理でしたね。メディア関連の会社ならともかく、ここは金融なんです。

チューインガム男

そう、こやつは面接の時にチューインガムを噛んでいたのです。面接は普通に始まりましたが、質問とそれに対する答えはべーつにレベルの何でもない採用するには至らないか、ぐらいの感じでした。しかしある瞬間気づいたのです。ちょっと待った、このバカ面接に来ておいてチューインガムを嚙んでいやがる。

それに気付いた瞬間、一気にもう面接は終わらせて「絶対に没」と人事に言うと決めました。しかしこんな非常識なバカがしかもメガバンクを目指してくるとは。しかしそんな奴でも書類選考は潜り抜けられたのです。いずれはなんやかんやどこかのメガバンクに平気で就職している可能性は十分あると思いました。

大人大学生

パーティー男とチューインんガムと今時の若者はこんなアホばかりかと思いきや、マトモな人も当然いました。次のインタビューに来た人はちょっと大柄、黒髪のはっきりした顔立ちで、なんとなくイギリス系かと思われました。それはともかく話し始めると兎に角落ち着いているのがまずは大きな印象となりました。面白おかしく何かが転がっているかのように話していたパーティー男とは全然違い、ゆっくりしかし的確に何もかも答えられる人でした。

で普通に話してそれなりに盛り上がったわけですが、ふと思い出したのがそういえばこの人まだ大学生、あたかも同僚と何かしら話しているかぐらいの話っぷりである事に気付きました。いや、こいつはできる、と思いました。

論外の連中はさておき、この思い切り落ち着いた大人大学生、やはり同僚の間でもダントツで評価がトップでした。

レジメでは分からないそう言った話した時の受け答え、不必要に笑っていない、余計な事をマシンガンのように喋りまくるでなく、口数少なくともポイントを抑えればいいんです。

晴れてインターンに

気になってユーチューブで調べてみたら、日本での就活におけるマナーとか要は堅苦しいマニュアル動画がいくつもありました。ノックは何回、名刺をいきなり要求しない、言われるまで絶対席には座らない、などなど。アメリカでの新卒を含めた面接、そのような日本にありがちな堅苦しいルールはありません。いうなれば常識をもってして臨む、ぐらいでしょうか。ただその堅苦しい形式以外の重要な点は日本での就活面接でも同じような気がします。

日本人と比べるとがぜん口数の多いのがアメリカです。そして何を話のネタとして準備しておくかと言う事に集中します。およそどこでも言われるその会話ネタ準備内容と言えば、まずはどうして志望先の会社がいいかというところ。意外とこれまともに答えられない志願者はいるものです。どこの会社でもいいから応募した、という人は五万といます。でそういう人は応募先の会社の事をほぼ知らないことが実は多いんです。こういうのは面接でバレるし直ぐアウトです。

また今までの自分の育った背景、学校での活動、そしてここが肝心ですが、そういった事を踏まえてみるとどうして自分はこの会社に適しているかという方向に話を持っていく事です。ただ過去にあれしたこれした。それは置いといて今はこの会社に就職したい、では過去を説明した意味が無く無駄な時間となってしまいます。

そして次に肝心ともいえる事が、会社の事をよく理解した上で質問事項を準備しておく事です。例えば今現在の政治経済状況で言えば「トランプ第二政権では銀行の自己資本規制緩和に進んでいるようですが相変わらず公定歩合は高い水準です。そのような状況下資本有効活用という点で今後5年先とかどのような経営方針を打ち立てているのですか?」とありきたりながら一応業界が今直面する問題を踏まえた質問をするというのはいい事です。因みにこの例の質問はどこの銀行にでも使える便利なもの。会社に特有化した質問にできれば更に有効です。

こういった大変気の利いた質問をできる人は実は随分と少なく、元々狭い門なのでそういった稀有な存在を見つけてはそういう人達だけにオファーをすれば大体いい感じです。これが誰でもいいから来てくださいレベルの会社・仕事内容だったらまた違うのでしょうが。

インターンノルマ

基本インターンのノルマといえば2-3か月後のプリゼンをするという事でしょう。与えられた課題でもって何かしら面白い話をするのが日頃の態度と並んでかなり肝心な事です。

そのプリゼンを準備するに辺り、その日が近づくにつれインターンの人からプリゼンの練習やそれへのコメントを求められたりします。そういう相手をするのも仕事の内ですからその辺はレベルの差が相当ありえますが、一応快く相手をします。

大体そのプリゼンは部署のインターンをかき集め数時間かけて順番にやってもらいます。全員当然散々リハーサルをやり、内心思いきり緊張してやっている事でしょう。ただアメリカは小さい頃から学校でプリゼンするを習ってきているので、日本人が思うほどにはそういった事には抵抗がない印象を受けます。

マジな話、アジア出身の学生とかは典型的にこういうプリゼンが下手くそなのがかなりの割合でいます。皆さんアメリカ人が苦手な算数は良くても、肝心なプリゼンはあまり訓練されていなく、ついついオタクむっつり、クソつまらない意味不明プリゼンになりがちです。

逆に、実は中身が無くても、聞いていると随分パワーのあるプリゼンをよくもまあここまで中身なしでやってくれるわ、というのもあります。

そして全員のプリゼンの終わった後が人生の分かれ道ともいえる肝心な事が始まります。それはプリゼンと普段の態度などから誰が卒業後正式採用に相応しいか決める事です。場合によってはプリゼン終了直後その場でマネージャー連中が話し合う事もあります。あるいは単純にそれぞれが点数をつけてメールなり人事ポータルサイトなどに評価を書き込んで人事が決定とかもありえます。

つい先日、プリゼン直後そのままマネージャ連中が居残り話となりました。そこでは先ほどインターンが順番に行ったプリゼンに対する評価、そして今まで2-3か月の勤務態度などについても議論しました。恐ろしいのははずれインターンを世話したマネージャーとかは、うちのインターンは最低だったとかかなりキツイ事をずけずけと言う場合が多々ある事です。考えてみたら下手に出来損ないインターンが就職してしまい、ましてや自分の部下にでもなろうものならとんでもありません。

また逆にこいつはいい!というのがいた場合は、基本惜しみなく賞賛し絶対雇いたいと応援します。

因みに今年Junが世話したインターンですが、基本ビジネスは知っている、またプリゼン自身もおよそできていました。しかしまあべーつにぐらいの能力。そして他のインターンに至っては世話をしたマネージャが「彼はメタクソ良かった。絶対いい」というような熱望。Junがちょっと手助けしたインターン、これはダメだ、と思いました。

考えてみたら高校、大学、と難関を通り越しそして数あるインターン志望者の中から、まずは面接に挑む機会を得てそしてその中から数少ない人達がインターンとして採用。更にインターン全員が卒業後就職できるのではなくそこでも振り落とし。そう考えると指数関数的に極僅かな確率でしかないところを潜り抜けて就職に至る、と言うような印象を受けます。

インターン採用に関しては人事が大きく関与していますが、中途採用が当たり前のアメリカ、その点は異色です。というのも中途採用にあたっては、人事は面接の時間を決めるなどの事務的な事は全てやりますが、採用の決定権は基本配属先、雇い先のマネージャーです。人事は現場の判断をはいそうですかと受け取り事務処理をするのみ。インターンに関しては人事がかなり色々と決定している印象が強いです。

新卒ならぬAI採用

雇う側と雇われる側、それぞれ自身の利益を最大限にして行動するは資本主義の基本です。景気が良くなれば学生が有利で会社は条件をよくせざるを得ません。またそういう状況では学生は二股三股かけてその中から一番いい会社に行きます。

逆は酷いもので、景気悪化でもされたらインターン先の新卒枠の消滅あり得ます。そうなると全体的にさらなる狭き門となります。

そして今年顕著に見られたのはAIの影響です。ウォール街ではまだ大した影響が新卒採用ではありませんが、しかしハイテク業界ではもうとんでもない状況に既になっています。仕事は山ほどあるが新卒レベルができるプログラミングは既にAIができる。その程度の技術しかない新卒は雇う必要がないのです。

かつてとんでもない花形だったコンピューター関連を専攻した連中が新卒で失業率が高い

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しかし学生視線(数年で就職)でアンテナ張っている人にはその脅威が手に取るように判ったのでしょう。かく言ううちの娘、当時はブロックチェインに興味があり色々とやっていました。

それはともかく、実際今年の新卒は多くの人が就職に苦労していると言っていました。インターン先のファンド会社に就職した娘は問題なかったのですが、多くの友人やクラスメートが未だに仕事を探していると言っていました。また仕事がある、と言っても正社員ではなく短期契約あるいはテスト社員扱い、なんの保証もない状況の人も多々いるとのこと。

ハイテク業界もウォール街も考えてみたらどちらも情報を加工する事が商売と言えるでしょう。そこでまずはハイテク業界がいよいよ人間様から仕事を奪う現実が到来。いずれはウォール街もです。ただその同じ情報加工の業界とはいえ、ウォール街でのビジネスは未だに人と人との間でしかできないディールなどがあると思います。AIはネットなりになんらかの形でデータとして存在しない事柄は対象外です。実在する人物が知っている、持っているデータがデジタル化されていない場合はAIの弱みとなるでしょう。そう考えるとまだウォール街はAIの影響がビッグテックほどではないのでは?と言う気がします。

とはいえ新卒レベルができる事がまずはAI自動化されるのでは、という懸念はあります。ホワイトカラーへの就職はいずれは更に困難となるのでしょう。

やはり何が起こるか分からない

ありきたりの事ですが、やはり何が起こるかは誰にも分かりません。新卒で就職難、で例えば最後には諦めて大工になりそこで腕を上げて実は結構儲かった、とかは今まさになきにしもあらずです。

今年のインターン季節の始まる頃に、去年インターンだった人がチームに社員として加わりました。あーこの彼も良くやった、と思いました。そして今年うちのチームに配属されたインターン、彼はプリゼン後のミーティングでイマイチとの評価を受けて、卒業後のオファーをするまでもありませんでした。ただその彼もこれからの長いキャリア、何をしでかすかはその人次第です。

JunもMBA習得後に就職した銀行、最初は「ここであと40年とか過ごすのか」と今から思えばとんでもない寝ぼけた事を思ったものでした。あの頃の自分を思い返すと、インターンの皆様にはほんと頑張っていただきたいと強く思うわけです。

Jun

p.s.

毎回エピソードタイトルのバックグラウンドの写真ですが基本JunがNYCのどこかで撮影したものを使用しています。ただどこからかストック写真を適当に選んだのではありません。なのでこれから忘れなければその写真の解説もしようと思います。

今回はブルックリンにあるうちのコンドミニアムの屋上から撮影したもので、マンハッタンミッドタウン一帯の高層ビルが見えます。左の方に集合しているのはハドソンヤードというエリアでつい最近できたものです。その中で一番背の高い建物の100階にレストランがあります。ちょうど真ん中にあるのがエンパイアステイトビルディング。これからも分かるように、エンパイアステイトビルディングの周りには何故か高層ビルがありません。そして右の方にある4っつの細長いのはどれも最近完成したものばかり。その中で一番左にあるものはオフィス、あとはすべて超高級コンドミニアムですべて56、57丁目に集中しています。